CSR・サステナビリティCSR ・ Sustainability

TCFD提言に基づく情報

昨年から開始したTCFD提言に基づく情報開示について、その質と量を充実させ、本年も引き続き進めます。

2021年8月のIPCC第6次評価報告書によれば、人為的な温室効果ガス排出量は増加し、産業革命以降から世界の平均気温は2011年~2020年平均で1.09℃上昇し、人間の影響が大気、海洋、陸域を温暖化させてきたことに疑う余地がないと報告されております。

温暖化は気候を変動させ、世界の経済・社会・環境に大きな影響を及ぼし、当社グループにおいても、持続的な成長には、温暖化の要因となっている温室効果ガス排出の削減が喫緊の課題と認識しております。今後も、当社グループの取組みを積極的に開示し、企業価値向上に努めてまいります。

1. ガバナンス

当社グループでは代表取締役社長を気候変動対応の責任者とし、社長を委員長とするサステナビリティ委員会において取り組みを管理しています。サステナビリティ委員会は年4回開催され、サステナビリティ委員会のもとには気候変動問題に対処するための専門の下部組織として、TCFD開示プロジェクトチーム(以下、TCFD開示PT)を設置しています。

TCFD開示PTは段ボール事業部門の責任者と住宅部門、運輸・倉庫部門の関係者によって構成され、TCFD開示PTからの提案・報告は、サステナビリティ委員会で審議・決定されます。サステナビリティ委員会は、各部門やグループ会社へ指示・助言する役割も担っています。 

気候変動問題を含むサステナビリティ全般に関連する取り組みは、年1回以上サステナビリティ委員会より取締役会に報告され、取締役会にて気候変動問題を含めたサステナビリティ全般の審議・決議を行っています。(図1)

図1 ガバナンス

2. リスク管理

当社グループでは社長を委員長とする財務リスク委員会、コンプライアンス委員会、サステナビリティ委員会を設置し、総合的なリスク管理体制の構築・運用を行っています。(図2)

各委員会で、グループに共通するリスクを評価し、優先順位の高いリスクを特定し、重要リスクは取締役会で審議・決定しています。
重要リスクについては、グループ各社で内容に応じた各種対策を立案・実行し、委員会で半期毎に管理しています。

図2 リスク管理

マテリアリティ

すべてのステークホルダーへのインパクトと当社グループへのインパクトの観点から重要課題を分類し、12個のマテリアリティを選定し、リスクの相対的評価を実施しております。(図3)
これらの重要課題解決に向けて事業を通して取り組み、持続可能な社会に貢献してまいります。

図3 マテリアリティ

3. 戦略

3-1 対象事業

当社グループでは、シナリオ分析実施に際して、サステナビリティ委員会において気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出しと、それらが及ぼす具体的な財務的影響額の評価を行っております。シナリオ分析として、昨年は、当社グループにおいて売上、営業利益の大きい国内段ボールセグメントのトーモク単体のみを対象としましたが、本年は、トーモク単体に、国内段ボール・紙器関連のグループ会社*を追加しました。2つの将来シナリオ(4℃シナリオと1.5℃シナリオ**)を用い、2021年度の実績値を基準に2030年時点のシナリオを適用し、影響額を予測、考察しました。今後は、住宅、運輸セグメントにも対象を広げ、且つ最新データを使用し、継続してシナリオ分析を実施することでその精度を高めていく予定です。また、審議結果は経営戦略に統合し、不確実な将来に向けたレジリエンスを高めてまいります。

**1.5℃シナリオで推測データがない場合は2℃シナリオを使用

対象事業

国内段ボール・紙器の製造・販売(単体)+国内段ボール・紙器関連グループ会社*

選択理由

グループの主要事業領域であるため

*国内段ボール・紙器関連グループ会社 15社

連結
  • (株)ワコー
  • (株)十勝パッケージ
  • 仙台紙器工業(株)
  • (株)トーシンパッケージ
  • 大一コンテナー(株)
  • タイヨー(株)
  • (株)ホクヨー
非連結
  • 清水ダンボール(株)
  • 南彩紙器(株)
  • 熱田紙器(株)
  • 門真紙器(株)
  • (株)太田ダンボール
  • (株)セキヤ
  • 遠州紙工業(株)
  • 日栄紙工(株)
3-2 シナリオ

分析にあたり下記シナリオを設定しました。

時間軸:2030年

世界観 政策により気温上昇が抑えられる世界 気温上昇・気候変動が進む世界
1.5℃シナリオ 4℃シナリオ
概要 2100年の気温上昇が19世紀後半から1.5℃に抑えられるシナリオ。
規制強化により炭素税など移行リスクの影響を受ける。
物理リスクの影響は4℃シナリオに比べ相対的に小さい。
2100年の気温上昇が19世紀後半から4℃上昇するシナリオ。
異常気象の激甚化など物理リスクの影響を受ける。
気候変動に関する規制強化は行われないため、移行リスクの影響は小さい。



移行 IEA Net Zero Emission by 2050 (NZE)
IEA Sustainable Developement Scenario (SDS)
IEA Stated Policies Scenario (STEPS)
物理 IPCC RCP 2.6 IPCC RCP 8.5
3-3 リスク・機会・対応策

想定されるリスクと機会を洗い出し、影響の大きさを定性的に大~中~小で評価し、その影響の大きいリスクと機会を整理し、まとめました。(表1)
移行リスクは主に大きい影響が予想される1.5℃シナリオを、物理リスクは4℃シナリオに基づき想定しました。また、その影響を最小限に抑えるため、現在進めている対応策を追記し、今後も、その推進に努めてまいります。

表1 リスク・機会・対応策

3-4 事業インパクト評価

参考資料

炭素税 IEA WEO 2022*
化石燃料価格 IEA WEO 2022* の原油価格から都市ガス、軽油、A重油、LPG価格を推定
電力価格 IEA WEO 2019*
洪水被害** 2021年度のトーモク単体と国内段ボール・紙器関連グループ会社の実績値から、一人当たりの償却・在庫資産額を算出し、国土交通省「重ねるハザードマップ(2023年4月時点)」、「治水経済調査マニュアル(案)令和2年4月」、「河川砂防技術基準 計画編 技術資料」、気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会「気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言」、環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメv3」を参考に算出
営業停止** 2021年度トーモク単体と国内段ボール・紙器関連グループ会社の実績値から、一人当たりの付加価値額を算出し、洪水被害と同様の手順により算出
高潮被害 洪水被害と同様に、浸水深さを特定し、国土交通省・農林水産省「海岸事業の費用便益分析指針」、「治水経済調査マニュアル(案)令和2年4月」、土木学会「津波と高潮の同時発生確率に関する一考察」を参考に、算出した。被害対象拠点もありましたが、被害対象となる資産がなく、被害額ゼロとなったため、対象としておりません。

* International Energy Agency World Energy Outlook、為替レートは、109.75円/USDを使用

** 1年平均での被害額を試算

事業インパクトのシナリオ毎分析

2021年度の実績値に、2030年時点のシナリオを適用し、影響額を予測しました。それぞれのシナリオについて想定される営業利益は、2030年温室効果ガス排出量(2013年比50%)目標の達成前後を示しました。1.5℃シナリオでは、政府による炭素税等の規制強化による影響が最も大きく、排出量削減目標達成することにより、その影響を緩和できますが、Scope1起因による影響は残り、今後、ボイラーの燃料起源による温室効果ガス排出量の削減が重要となってきます。4℃シナリオでは、削減目標達成の有無にかかわらず、化石燃料価格や洪水による被害の影響が大きくBCP強化が一層重要になります。

4. 指標と目標

当社グループでは、経営の重要課題である気候変動対策に関連した数値目標を設定しております。
今後もグループで、再生可能エネルギー由来の電力、燃料転換、化石燃料削減や省エネルギーが可能な設備導入等を進めてまいります。
尚、2023年度よりトーモク単体の全17工場にて使用する電力を、再生可能エネルギー由来電力にすべて切り替えました。

GHG排出量の削減目標 2030年までに2013年比50%削減(Scope1+2)
使用電力の再生可能エネルギー由来比率 2030年までに100%

トーモク単体と国内段ボール・紙器関連グループ会社の2022年度総排出量729千tの約94%がScope3*に起因し、またそのScope3*の約90%がカテゴリー1によるものです。
トーモク単体のScope3*排出量が2021年度に比べ約17%の大幅削減になったのは、2022年度の段ボール原紙排出量(二次データ)が減少したことによります。今後も、大きい比率を占める原材料(段ボール原紙等)つきましては、製紙メーカーとの協働により削減を進めてまいります。